近鉄の小林哲也球団社長とオリックスの小泉隆司球団社長は、しょっちゅう食事をともにする。
4月末。「(近鉄を)買ってくれるところ、ある?」「あるかな」「ないやろな」。こんな会話を交わしていた。「こういう話もある」。小泉社長がそう言って切り出した話が、合併案だった。
小林社長は「それはあるな。上にあげようや」。すぐに親会社の近畿日本鉄道の山口昌紀社長に相談した。山口社長は「結構やないか」とゴーサインを出した。それから約1カ月半。公になった合併案に強い反対意見はないが、実現までに整理すべき点も多い。
根来コミッショナーは「野球協約は極めて穴が多い。合併という話が出てきて、現行の協約では自信を持ってイエスとは言えない」。コミッショナー事務局の法規担当者が、ちょっと見直しただけで10項目ほどの疑問点が浮かび上がった。
一番の懸案となるのは、選手をどうするかだ。
近鉄の支配下選手は68人、オリックスは66人。現行の1球団70人枠だと、合併で64選手があぶれる。彼らと契約できるよう、他球団の支配下選手数を80人まで拡大する措置を協約の57条で定めているが、どこの球団も経営は苦しく、多くの選手を救えるとは限らない。
オリックスのある投手は言う。「どうなるんでしょうね。僕ら野球しかできない。メタメタに打たれたら切られるかもしれない」。日本プロ野球選手会の松原徹事務局長は「合併は我々とも協議すべき問題。選手の雇用が確保されないのだから、現時点では反対だ」。7月10日の選手会総会で話し合うという。
両球団の選手がどういう割合で、合併した新球団へ移るかの規定もない。両球団のベストメンバーで構成されるとなると、他球団からの反発も考えられる。
オリックスが近鉄を合併する「吸収合併」なのか、対等で新球団を作る「新設合併」なのかも問題だ。根来コミッショナーは「協約の33条は吸収合併を想定しており、新設合併は範囲外」。新設合併なら、プロ野球への参加料として課せられる30億円が必要なのでは、という議論も起こりかねない。
シーズン中に突然降ってわいた合併問題に、根来コミッショナーは語る。「緊急だから、先に合併を認めてもらって、その後、“特別措置法”を作ってやるしかない」
〈野球協約第33条(合併)〉 この組織に参加する球団が他の球団と合併するときは、あらかじめ実行委員会およびオーナー会議の承認を得なければならない。この場合、合併される球団に属する選手にかんしては、必要により第57条(連盟の応急措置)および第57条の2(選手の救済措置)の条項が準用される。
(06/16 13:07)
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