楽天が野村克也監督(74)の後任を元西武監督の東尾修氏(59=野球評論家)に絞り込んだことが8月31日、分かった。契約を1年延長して4年目となった野村監督の下、チームは3位で悲願のクライマックスシリーズ進出も現実味が増してきているが、74歳の高齢のために野村監督勇退の方針に変更はない。球団は、後任候補の中から東尾氏の経験を高く評価した。西武監督としてパ・リーグを2度制した手腕に、チームのさらなる飛躍を託すことになった。

 決め手は経験だった。東尾氏は、7年間監督を務めた西武を、全シーズンでAクラスに導く安定した手腕を発揮した。若手を積極的に起用して育て、しかも2度のリーグ優勝。レッドソックス松坂、アストロズ松井ら球界を代表する選手たちが「恩師」と慕う求心力も光る。球団の求める「ポスト野村」に、東尾氏こそ最適な人材だった。

 島田オーナーはじめ、本社サイドの評価も高い。複数の候補の中から、ここまでに絞り込みの作業を重ね、東尾氏に一本化した。9月中に正式な打診を行い、楽天3代目監督が誕生する。就任発表は、シーズン終了後になる見込みだ。

 球団創設2年目からの3年間。野村監督の指揮の下で、チームの土台づくりは進んでいった。野村楽天4年目の今季は、シーズン終盤のこの時期に3位に位置するまでに、チーム力は向上した。それでも、野村監督はたびたび「まだまだ育成の必要なチーム」と話す。その指摘は、球団としても同じ認識だった。

 後任候補に人気、知名度、ブランドイメージを優先する選び方もあった。インパクトという面から元巨人の江川卓氏(54=野球評論家)も候補に上った。だが、白羽の矢が立ったのは、指導者としての経験と実績のある東尾氏だった。

 今や国民的な人気を誇る野村監督の不在は、来季のチームにとっては大きな痛手ともいえる。だが、74歳の同監督に、いつまでも甘えるわけにもいかない。1試合1試合に重圧のかかる勝負の世界。しかも北海道から福岡と、移動距離の長いパ・リーグは、体力的な負担も極めて大きい。独自の「亀理論」を持つ野村監督は、ウオーキングなどの運動は一切しないが、健康を維持している。だが、実は昨年、千葉マリンでのロッテ戦で体調を崩し、病院に運ばれたこともあった。「夢は、胴上げされて死ぬこと」と公言する。仮に続投を要請すれば、同監督には受諾する意欲はあるが、球団としては健康を最優先にするのは当然のこと。「契約の延長は1年限り」という昨秋の予定に変更はない。

 チームは悲願のクライマックスシリーズ(CS)進出に猛進している。野村監督とともに戦える試合は、限られるが、ナインと仙台のファンと一丸となって、CS初出場をつかみ、野村監督への恩返ししたいところだ。最下位からAクラスの力をつけた野村楽天、そして常に優勝を狙える東尾楽天へ。理想的な政権交代となる。

 [2009年9月1日8時22分

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