【ベルリン24日=佐々木一郎】男子やり投げの村上幸史(29=スズキ)が、日本人でも世界に通用することを示した。2投目に82メートル97を投げて3位となり、この種目で五輪、世界選手権を通じて日本勢初のメダルを獲得した。投てき種目の中でも体格差によるハンディが少なく、日本人に可能性が広がっていると説明。日本陸連の小山裕三投てき部長は、地肩が強い「ノーコンピッチャー」のやり投げへの転向を歓迎した。

 やり投げのメダルは、日本陸上界初だった。日本人が世界で戦うには難しいと思われた種目だったが、村上には確信があった。

 村上

 僕の中では、やり投げは世界で戦えると思っていた。こういう結果を残せたのは、日本のやり投げが、世界で通用することを示せたと思う。

 投てき種目は、砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、やり投げの4つ。世界で戦える日本人は、ハンマー投げの室伏くらいだった。だが、村上には、戦える根拠もあった。

 村上

 やり投げは、体格差が関係ないんです。1キロもないモノを投げるんで。砲丸や円盤は体格差が関係する。やりは、かなり通用するというのが僕の感じです。

 87年ローマ大会で、溝口和洋が6位入賞を果たした実績もある。今季は、荒井謙(七十七銀行)が日本歴代5位の78メートル55を投げ、世界選手権参加標準記録Bを突破した。小山投てき部長も「やり投げは地肩の強さも大きな要因ですが、助走も使える。村上も野球出身で、日本は野球をやっている子が多いから、いい環境にあると思う」と話した。

 さらに同部長は、強肩選手の陸上転向も勧めた。「プロ野球の選手とか、ノーコンピッチャーは大歓迎。80メートル投げた先は(横幅が)40メートルのところに投げればいいんだから。バックホームをして、スタンドに投げ入れちゃうような選手もいい。どしどし陸上の門をたたいて欲しい。野球のマウンドも気持ちいいけど、こっちも気持ちいいよ」。

 村上は次の目標として「85メートルに乗せたい。85メートル以上は世界でも一握り。次もメダルを取るには、最低限、そこをどうにか投げられるようにしたい」と話した。メダリストが誕生した種目は、これまで以上に注目される。このメダルは、日本やり投げ界の未来を左右するかもしれない。