Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

WBC決勝戦における韓国の本当の敗因?

すでに皆さんご存じの通り、WBC勝戦は延長10回表、イチローのタイムリーによって日本が勝ち越し、日本の連覇で幕を閉じました。
このイチローの打席で韓国ベンチは敬遠も考えていたのですが、それがバッテリーに伝わらず、結局勝負して打たれてしまったそうです。

 最も重要な場面での小さなミスが、韓国のWBC制覇を遠ざけた。3―3の10回2死2、3塁。ベンチの指示は「イチローとの勝負」ではなかった。

 試合後の会見で「われわれはベストを尽くした。勝てれば最高だったが不満は何もない」と話した金寅植監督が、唯一残した後悔。それが決勝点を与えた場面だった。

 指揮官の指示は「際どいコースのボールを投げて、うまくいかなければ歩かせる」。ベンチから捕手へ、捕手から投手へ、作戦はサインで伝達される。しかし、ベンチの意図は正確に伝わらなかった。

 サインを中継したのは、9回から守備に就いた23歳の控え捕手、姜ミン鎬。金寅植監督は「経験の少ない捕手で、作戦をきちんと理解できなかったのだろう。確かにベンチと捕手でサインの交換はしたのだが、混乱があった。はっきり敬遠を指示しなかったことが問題だった」と振り返ったが、そのツケは大きかった。〔共同〕 (00:29)

NIKKEI NET(日経ネット):韓国、痛すぎた伝達ミス WBC決勝点の場面、本当は「無理するな」



この件について「セカンド・カップ はてな店」のid:Soredaさんが、勝負も敬遠も決断できなかった悪い判断だと批判しています。

これぞまさしく、やってはいけないという典型的なパターンじゃないですかね、トーナメントとかの「ここ一番」で。


重大な場面を迎えた場合、例えばアナウンサーが、


川本さん、一塁が開いてますが・・・と振る。すると解説の川本さんが、


そうですね。ここはバッテリー、歩かせるのか勝負するのかしっかり確認する必要があります。迷っているようならベンチはタイムを求める必要がありますね。くさいところに投げて、良ければ三振を取る、駄目ならフォアボールというのは、こういう場面ではとても危険です。バッターは打ちに来てますからね、甘く入ったコースは全部打たれる危険性があります。ここはしっかり、バッテリー確認して欲しいですね。


(アナ)あ、監督が後ろを振り返って何か言っています・・・。ベンチから、誰か出ますね、あ、控えのキャプテンがマウンドに駆け寄るようです。


(川本さん)そうです、そうです。ここはしっかり意思を確認すべきです。


といった展開になる、と。


冷静に考えれば、こういう処置はまったく正しい。


なぜなら、


「際どいところに投げて」というのは、勝負を避けて歩かせるのもイヤ、でも、勝負する度胸または勝算もない、と言っているからだ。いかにも戦略的なことを言っているようで守ってる側は既に精神戦で負けてる。大げさにいうのなら守ってる側は戦略を捨てているといっていいかと思う。打者の凡ゴロかフライか三振を「願ってる」になっちゃう、と。


だからこそ、もう既に、かなり前から、こういう曖昧はいけません、こういう場合は戦略を確認する、ってのがほぼパターン化されてる。で、この戦略にあっては歩かせるというのはネガティブでも弱気でもなく、立派に、根性のある戦略(場合によっては塁を埋めた方がフォースアウトを狙えるとかもある)だ。そしてこの確認の内にチームのチームたる由縁みたいなものも出て幾多の名勝負を作ってきた。江川、お前の好きにしていいよ、みたいな。


にもかかわらず、ここでこういう場面を見るのかぁと感慨深かった。


でも、youtubeに上がっていたイチローの打席を見たけど、際どいところに投げて云々というより、ファールで粘られて、もう投げるところなくなっていたという感じもした。だから、さらに、もう戦略がない、ってな状態だったのじゃまいか、あのバッテリー。


7球目だったかのアウトコースを外したところで、表面的には「一息」と解釈されるだろうが、でも、これは弱気だななど私は思った。イチローはそれを見送って、うふふ、だっただろう。


で、問題の8球目。ここはもう、勝負を決意したのなら、胸元のボール気味の早い球で振らせる、とかいうのがベストショットだとは思うが(これなら打たれても仕方がない、攻めに行ったのだから、と理解される)、やっぱりその度胸はなかなかないんだろうなぁ、いわゆる腕が縮こまる、なんだろうなぁと、何かこう懐かしい気持ちになった。こういうのはやっぱり、高校時代の工藤とかでもなかったら、見たか、この野郎的に決まることはないんだろうな、みたいな。


一応インコース狙いだったんだと思うが、打ちごろの球になっちゃって、イチロー、きれーーーにセンター返し。


だけど、やっぱり、イチローを歩かせられない、勝負を避けたら国に帰れないから、歩かせるオプションがネガティブに拒否されている、しかし、真っ向勝負するんも腰が引けてる、になっちゃったんだろうなぁなども思う。

金寅植監督は「経験の少ない捕手で、作戦をきちんと理解できなかったのだろう。確かにベンチと捕手でサインの交換はしたのだが、混乱があった。はっきり敬遠を指示しなかったことが問題だった」と振り返ったが、そのツケは大きかった。



はっきり敬遠の指示をしなかったのが問題だった、とだけ言えばいいと思うんだが、まだバッテリーがどうしたとか言っているという点で、監督も、俺の一存でイチローを歩かせました、とは言えないのかな、とか思う。試合が終わっても、まだ、監督に覚悟がない、ってのがこの試合のすべてかもしれないなぁとか思う。


何事も、戦略と覚悟だと思う。


そして、日本は日本で、積み重ねて来たものってあるよなと思った。

大げさなのはわかってる。でも潮目が変わった気がした - セカンド・カップ はてな店



この話を読んだとき、僕はイチローが韓国で長年憎しみの的となっていたことを思い出しました。このニュースなんかはその典型的な表れでしょう。

韓国悪ノリ「イチロー暗殺Tシャツ」なんと球団公認!


 WBC1次ラウンドを1位通過して意気上がる韓国で、球団公認の仰天グッズが発売され、話題を呼んでいる。

 今年は韓国統監・伊藤博文が暗殺されて100年目。日本戦で好投した奉重根投手(28)を暗殺者の安重根になぞらえ、マリナーズイチロー外野手(35)を標的に据えた球団公認の悪ノリTシャツが大人気なのだという。

 奉の所属するLG球団は12日、前日午後4時から発売した330着限定のそのTシャツが、ファンからの爆発的な反響を受けて約10時間で完売したと発表した。

 正式な商品名は「奉重根義士」。価格は1万2000ウォン(約790円)で、9日に東京ドームで行われたWBC東京ラウンドの1位決定戦で先発し、5回3分の1を無失点に抑えて勝利に貢献した奉の活躍を記念し、急きょ発売したものだ。

 そのデザインはなかなかに扇情的だ。日本戦を見た韓国のネットユーザーは、特に奉が日本の象徴イチローを3打数無安打に封じたことを「安重根義士が3発の銃弾で伊藤博文を倒したことと同じように痛快」と喜び、安重根と同じ名を持つ奉を「義士」「烈士」と褒めたたえた。これに着目したLG側は安重根の偉人伝の出版社に承諾を得てこの表紙をパロディー。Tシャツ前面では、安重根の顔の部分に奉の顔を合成し、「2009・3・9東京義挙 奉重根義士」の文字を並べた。

 初代韓国統監の伊藤博文は、韓国では「日本帝国主義の元凶」として忌み嫌われている。また、イチローも第1回WBCで語った「戦った相手が『向こう30年は日本に手が出せないな』と、そんな感じで勝ちたい」という、いわゆる「30年発言」が韓国では「傲慢(ごうまん)」と不興を買った。

 「悪い口を治したほうがいい」という意味で、名前の響きに似せてつけられた卑称「イブチリョ(口治療)」も広く浸透している。Tシャツには打席に入るイチローの影絵も盛り込まれ、「イブチリョ専門医/Dr.BONG」の文字も見える(「Dr.BONG」は奉の愛称)。

 くしくも今年は、伊藤がハルビン駅で安重根に暗殺されてちょうど100年目。ネットユーザーの雑談を、球団がオフィシャルの商品として転用するあたりは、日本ではなかなか考えられない現象だろう。韓国国内では前回大会でもイチロー死球を浴びせた投手を「烈士」と称賛。観客はイチローが打席に入るたびブーイングを浴びせ、「独島(竹島)は韓国領」と大書したボードを掲げてもいた。

 場外戦も含め、ますます過熱する日韓対決だが、いずれにしても第2ラウンドでイチローが韓国投手陣を打ち負かすしか対抗策はなさそうだ。

ZAKZAK - 韓国悪ノリ「イチロー暗殺Tシャツ」なんと球団公認!



前回2006年のWBCイチローが「戦った相手が『向こう30年は日本に手が出せないな』と、そんな感じで勝ちたい」と語ったところ、それが韓国に対する侮辱であると受け取られ、それから3年間イチローは憎まれ続けました。そして今回のWBCでは、日本戦で2勝して決勝戦でも先発した奉重根投手をかつて伊藤博文を暗殺した安重根に例え、イチロー伊藤博文に例える悪質なパロディーも堂々と行われているという話です。*1


このような韓国国内のアンチ・イチローの空気が、肝心なところで韓国ベンチが「敬遠」という判断を行うのを躊躇させたのではないか、僕はそのように思います。
もしあの場面でイチローを敬遠したとして、その後韓国が日本打線を抑えて優勝したのであれば、優勝の興奮の中でイチロー敬遠も対して気にはされなかったでしょう。しかし、もし後続のバッターがヒットを打って日本が得点したら、イチロー敬遠について「憎きイチローから逃げた」として手ひどくバッシングされるのではないか、そのような想像が韓国ベンチや韓国バッテリーの頭をよぎったのではないでしょうか?
だからイチローをはっきり敬遠するという決断ができなかったのは、単に監督に戦略と覚悟がなかっただけではなく、韓国の反日ナショナリズムが韓国チームを縛ってしまった結果でもあったと思います。Soredaさんも言ったように「勝負を避けたら国に帰れない」という思いがあったのでしょうね。

*1:ただ歴史を見ると、伊藤博文日韓併合に反対だったため、この暗殺が皮肉にも日韓併合を促進する結果になったのですが、韓国人にとってはそういう細かいことはどうでも良いのでしょうか?w