昨年現役を引退した野茂英雄氏(40)がシーズン中もオリックス投手陣を指導することになった。オリックスは3日、野茂氏がテクニカル・アドバイザー(TA)に就任することを発表した。昨秋キャンプで臨時コーチを務めた際の指導力を評価した球団が要請し、2月1日から1シーズン契約した。試合前などに、数回にわたって指導する。同氏が日本の球団と契約した形になるのは94年オフに近鉄を退団して以来、15シーズンぶり。伸び盛りの投手陣をリーグ一に押し上げるための「野茂流指導」が本格的に始まる。

 野茂氏は昨秋、臨時コーチを務めたオリックス高知キャンプ後に、同球団からテクニカル・アドバイザー就任の要請を受け、快諾。このたび正式契約を結んだ。球団によると契約は2月1日から11月末まで。固定年俸制になる。

 ユニホームは着ないが球団スタッフ入りした形になることで、フィールドが広がった。野茂氏は契約を結ぶ上で「何日くらい行けるかは分かりませんが」と語ったというが、日数限定の臨時コーチではなく、いつでも球団施設やグラウンドに出入りできる球団スタッフなら試合前やミーティングも含め、継続的なコーチングが可能となった。

 野茂氏は早速5日から、宮古島での春季キャンプ第2クールで臨時コーチを務める。テクニカル・アドバイザーの就任については「5日から(宮古島キャンプに)参加します。オリックス投手陣に良い効果が出るように頑張っていきたいです」とコメントした。

 現在のオリックス首脳陣との信頼関係も強い。近鉄時代からの付き合いの大石監督や佐々木チーフ投手コーチ、清川、赤堀両投手コーチも近鉄出身。野茂氏もこれまでに「僕が教えることを佐々木チーフコーチや清川、赤堀コーチらがきちんと理解してくれている。僕が言ったことを理解してくれて、選手にうまく伝えてくれる」と話している。

 野茂氏は現役時代から、打者個々への対応というよりは、自分の最大の武器の球を投げることで打ち取る投球を目指してきた。ある意味で「王道」の考え方と話している。そうした考え方を伝えつつ、各投手の最大の個性、長所を最大限の武器にする指導を行うはずだ。高校、社会人、プロと、トルネード投法も直すことなく見守ってもらえたことで花開いたという経験も根底にはあるだろう。

 昨年7月に現役引退を表明した4カ月後のオリックス高知キャンプでは、投手陣に得意球のフォークの投げ方や、配球論などを惜しみなく伝授した。選手からの支持はもちろん、大石監督はじめコーチ陣もその指導力に目を見張った。

 中村球団本部長は「そんなに多くは拘束しない」というが「組織の1人として加わってくれるのはありがたい。年間通してチームを見てもらえる。精神的な支柱、よりどころになってもらいたい。試合前にブルペンなどでチェックしても大きな問題はないと思う」と期待した。球団にとってのメリットは計り知れない。

 オリックス投手陣は昨季2ケタ勝利4人にセーブ王も出すなど、上昇の途上にある。野茂氏も、秋の臨時コーチ以来、その若い投手陣に可能性を感じている。継続的になった「野茂流指導+伸び盛り投手陣」が、どれだけ変わるか。オリックス躍進のカギを握る。【柏原誠】

 [2009年2月4日8時24分

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