中日のエース川上憲伸投手(33)が、今オフにフリーエージェント(FA)権を行使する可能性が高くなったことが6日、分かった。川上は3月30日にプロ11年目でFA権利を初取得。関係者によると、9月25日に球団と残留に向けた下交渉を行ったが、現時点での合意に至っておらず、米大リーグ、国内他球団の評価を聞くためにも権利行使を視野に入れた模様。すでに進出が決まったポストシーズンで全力を尽くした後で、今後の進路を判断する。

 川上がFAを宣言する可能性が高くなった。関係者によると、球団と川上は9月25日、名古屋市内でFA権を行使しないで、チームに残留するための話し合いを持った。球団はエースの引き留めに向けて、4年の複数年契約を提示する可能性を示したという。しかし川上との間で大筋合意には至らなかった。

 川上との下交渉について西川順之助球団社長(75)は「もちろん残ってほしい選手。だから球団の気持ちを話しておいた」と話しており、今後も合意の余地は残されている。だが球団は昨季からFA選手に対しても、あくまでシーズンの成績を考慮して査定する方針を貫いている。西川球団社長は川上の来季年俸について「去年より成績が下がれば、当然、それを元に査定することになる」と明言。今季年俸3億4000万円(推定)からのダウン提示も視野に入れている。両者間で交渉が劇的に好転することは簡単ではない状況だ。

 昨季12勝8敗の川上は現在9勝5敗、防御率2・34を記録。日本代表で出場した8月の北京五輪ではチーム最多の5試合に登板した。帰国後は背中の張りなど体調不良で約1カ月の2軍調整を余儀なくされた。しかしシーズン終盤の9月24日ヤクルト戦で復帰。中継ぎ登板で8勝目を挙げると、2カ月ぶりの先発となった1日横浜戦では6回4安打無失点で9勝目。2年連続日本一に向けて、18日から始まるクライマックスシリーズなど、ポストシーズンに全力を尽くす構えを見せている。

 川上はこの日、東京都内の神宮球場近くの屋内練習場で調整を行った。「次はいつ投げるか、わからないよ」と話してバスに乗り込んだ。川上がFAを宣言した場合、メジャー、国内球団を巻き込んだ争奪戦になることは必至の情勢。当然FA権行使後も残留の選択肢は残されている。だが交渉の展開次第では、川上が中日のユニホームを着る姿は、シーズンの残り2試合とポストシーズンで最後になる可能性が出てきた。