<巨人3-1阪神>◇8日◇東京ドーム

 巨人が阪神との同率での首位決戦を制し、優勝マジックナンバー2を初点灯させた。0-0の3回、李承■内野手(32)が左中間へ先制2点二塁打。1点差にされた7回にはアレックス・ラミレス外野手(34)が、センターバックスクリーン右へ43号ソロを放って試合を決めた。今季阪神戦7連勝で、ついに141試合目で単独首位に立った。最大13ゲーム差をひっくり返す世紀の大逆転Vが、もう目前。最短で明日10日のヤクルト戦(神宮)で原辰徳監督(50)が宙を舞う。

 筋骨隆々の分厚い体が、頼もしく感じた。原監督はラミレスの体を抱き寄せるようにベンチで迎えた。存在感、信頼感が体を通して伝わった。

 原監督

 向こうに流れがいきかけたところだったが、何とかしてほしいという場面で打ってくれたね。

 大一番のターニングポイントで、重苦しい雰囲気を打ち破った4番に賛辞を送った。1点差に迫られ、試合の流れが傾きかけた7回2死だった。ラミレスは2-1と追い込まれた後の4球目スライダーをフルスイングした。バックスクリーン右へ本塁打王争いトップの横浜村田と並ぶ43号ソロで試合を決めた。

 ラミレス

 流れが相手に行きかけていたので、どうしても先に1点欲しかった。いい形でセンター方向に打てたね。自分のキャリアで最も重要な試合で打てて良かった。

 福岡遠征中の5月30日だった。ラミレスが原監督の部屋をノックした。陽気な助っ人が硬直した表情で部屋の外に立っていた。5月26日にベネズエラの同郷ゴンザレスの薬物使用が発覚。原監督が部屋に招き入れると、ラミレスが静かに語り始めた。「ゴンちゃんと仲が良かったので、私も薬物をやっていないかと心配していませんか。心配しないで下さい。日本で指導者をしたいと思っています。今まで積み重ねてきた実績をつぶすようなバカなことはしないですから」と伝えた。

 原監督は「ラミちゃんは本当に頭がいい。我々が心配しているだろうと察知したんじゃないかな。ここまで日本で長く活躍できたのは、その頭の良さがあるんだろう」と振り返った。そんな姿勢を知っているからこそ、主砲には絶大な信頼を寄せている。

 阪神との天下分け目の「10・8」を制し、今季141試合目で初めて単独首位に立った。94年、シーズン最終戦で同率首位の中日を破って優勝を決めた日に、マジック2が点灯。最短で明日10日にリーグ連覇が決まる。試合後、ラミレスは胸を張って言った。「ずっと追いつくんだという気持ちは持っていた。いつも言っていたけど、シーズンはどう始まるかじゃなく、どう終わるかだということを実証できたね」。

 原監督も顔を紅潮させ、「ファンも現場と同じ歓喜を共有してくれたのなら、監督冥利(みょうり)に尽きる。1歩先に出れた。これは大きい。明日から3つある。地に足をつけて戦いたい」。逆転連覇のゴールを切るまでは、気を抜くわけにはいかない。【久保賢吾】※■は火へんに華