阪神が、名物人形「くいだおれ太郎」の獲得に参戦-。阪神南信男球団社長(53)が14日、7月に閉店する大阪・道頓堀の飲食店「くいだおれ」の名物人形「くいだおれ太郎」について「(甲子園)球場に検討してみてはどうか、と言ってみる」と買い取りの検討に入ることを明かした。人形は閉店の発表以来、買い取りやレンタルなどの申し出が全国から殺到しているが、行く先は決まっていない。実現すれば甲子園球場に設置する形になり、新名所が誕生する。

 阪神の新戦力に「太郎」の名前が浮上した。イチローじゃない、タローと言っても、大物FA選手やドラフト候補ではない。その去就が注目されている「くいだおれ太郎」だ。大阪名物で人気を博したが、道頓堀の食堂が今年7月に閉店することを発表した。

 それ以来、引き取り先として、買い取りやレンタルの問い合わせが、全国の自治体や企業から100件以上届き、その「移籍先」はいまや社会の関心事のひとつになっている。

 そこに関西が誇る老舗球団も争奪戦に参入する可能性が出てきた。南球団社長が「(球場の問題で)積極的にはコメントしづらいが、球場には検討してみてはどうか、と言ってみる」と関心を示した。関西の名物のひとつが困っているときに、どうにか助けようとの思いもある。

 実は、阪神と太郎は浅からぬ縁で結ばれている。星野監督時代の03年。優勝目前の前祝いとして、タテジマの法被(はっぴ)姿でメガホンを首にかけて登場したことがある。キーホルダーのコラボレーショングッズが発売された経緯もある。

 実際に経営者も阪神ファンを公言。営業最終日の7月8日には、店内に太郎も入れて、甲子園の阪神―巨人戦をテレビ観戦する予定だ。

 道頓堀は大阪だが、飲食店「くいだおれ」の創業者、故山田六郎氏の出身地は兵庫県という縁もある。阪神が手を挙げれば、移籍先の本命のひとつになることは間違いない。

 ただ今回の獲得は球団の一存だけでは決められない。設置場所となる甲子園球場の賛同が必要。そのため、南球団社長が球場側にかけ合わなければならない。「どこに置いたらええんかな。アサヒビール(アサヒビアホール=内野2階席)の隣だと違和感はないかな」と球場内の設置場所まで思い描いた。リニューアルした甲子園内の売店にはカーネル・サンダースの人形もある。

 営業面でも魅力的だ。くいだおれと阪神のコラボグッズが展開可能で、猛虎ファンだけでなく、大阪を訪れた観光客の土産にもなる。近年、阪神はグッズ販売にも力を入れており、さらに品ぞろえが充実する。太郎の経済波及効果は約16億円という分析もある。

 甲子園の新名物になれば、優勝の時に道頓堀に投げ込まれるかもしれない、という「身の危険」にさらされることもなくなる。果たして、阪神が「くいだおれ太郎」を見事獲得し、リニューアル甲子園の新たな目玉とすることができるか。